9時
「きれいなお花がいっぱい」
巨大迷路に入るやいなや
シオリは思わず叫んだ
風に揺られて花たちがうれしそうに歌っている
ゴールはまだ遠い
15時
風が少し強くなってきた
花たちの雑音
彼女に何かを語りかけている
「うるさいな・・・」
そう言うとシオリは耳を塞いでその場を後にした
ゴールはまだ遠い
18時
すっかり辺りは暗くなっていた
あんなにうるさかった花たちの雑音も
いまは何も聞こえない
暗闇の中で無言で佇みこちらを睨めつけている
「怖い・・・」
シオリは足がすくみ動けなくなってしまった
ゴールはまだ遠い
21時
シオリは、昔母から言われた言葉を思い出していた
もっと耳を傾けていれば
もっと素直に聞いていれば
また違った人生が歩めたかもしれない
「言われるうちが華」
そういって彼女は再び歩きだした
目の前の花が少しゆれた気がした